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  1. 胃が痛い?

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スタッフブログ 2025.03.19
胃が痛い?

 いつもスタッフブログをお読みいただき、ありがとうございます。

 

 「胃が痛い」と訴えて外来を訪れる患者さんのほとんどが、原因は胃ではありません。正確なデータはありませんが、8割以上が違う印象です。痛みの部位は臨床では「心窩部」といい、左右の肋骨の一番下の交点で臍の上、いわゆる「みぞおち」です。強くぶつけたり当て身を食らったりすると息ができなくなる場所です。解剖学的にはここには胃もありますが、その奥に大動脈があり、周囲に腹腔神経叢という神経が集中するところがあります。おなかの痛みの中枢というイメージです。

 
 もちろん、胃そのものが痛みを発する疾患もいろいろあります。まずは胃潰瘍。胃の壁が深く掘れていく病気です。ピロリ菌やストレス、喫煙などが原因となり、前に穴があくと穿孔と言い、胃液が漏れ出て腹膜炎になります。後ろ側に深くなると、胃の背側には膵臓がありますので、穿通といって膵臓が穴をふさぐ形になります。急性胃炎も痛みます。ストレスや薬剤などで胃粘膜が充血してすりむき傷のような「びらん」を作る急性胃粘膜病変AGMLがその代表。カツオやサバ、イカなどの刺身を食べた直後にアニサキスという寄生虫が胃粘膜に食いついても激痛になります。

 

 いっぽう、臨床で非常に多いのは逆流性食道炎です。健常な胃粘膜が分泌する酸は非常に強力で、胃の入り口が緩い人が満腹のまま横になると、寝ている間に食物と胃酸が食道に上がってしまいます。よく「胸焼け」と表現されますが、喉の違和感を訴える方も多いです。食道の粘膜は酸に弱いので、痛みを感じているのは胃ではなく食道です。

 
 心窩部痛をおこす疾患で重要なのが胆石症です。肝臓で作られる胆汁は黄色い色素を含む消化液で、便の色のもとになります。この胆汁を運ぶ胆管は、胃の右後ろで膵臓の中を通って十二指腸につながります。胆管のわき道で胆汁をためておく小さな袋が胆嚢で、中にできる石を胆嚢結石、俗にいう胆石です。あぶらの多いものを食べた後に右上腹部が痛む「胆石発作」の原因となり、細菌感染を伴うと胆嚢炎になります。胆嚢結石が胆管に移動すると総胆管結石となり、ここで大きな石ができることもあります。胆管と十二指腸のつなぎ目に石が引っかかると激痛を起こしますが、画像検査でも分かりにくく、しばしば見落とされます。小さい石は自然に十二指腸に落ちて、突然痛みが軽快します。症状のない胆嚢結石は経過観察でよいのですが、総胆管結石は治療の対象です。完全に石がはまり込むと胆汁がせき止められ、黄疸や高熱をきたす急性閉塞性化膿性胆管炎になり、敗血症からショックになると高齢者は命を落とします。症状がなくても油断は禁物です。

 

 忘れてはならないのが虫垂炎の初期です。以前ここでも取り上げましたが、典型例の初期は右下腹部ではなく心窩部痛から始まります。虫垂炎とは診断されず胃薬だけを処方されるという事態にもなりかねません。

 
 ほかにも、腸閉塞、急性膵炎、膵臓癌、動脈解離、急性下壁心筋梗塞、特発性食道破裂などなど、心窩部痛を引き起こす重篤な疾患はたくさんあります。胃薬を服用しても改善しないような「胃の痛み」は、胃が原因ではない疾患も念頭に検査を受けていただく必要があります。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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