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  1. 子宮頸がんワクチンのキャッチアップ制度の期限が迫っています。

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スタッフブログ 2024.08.21
子宮頸がんワクチンのキャッチアップ制度の期限が迫っています。

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 国民病とも言われる「がん」は、日本人の二人に一人が一生のうちに患う病気です。多くのがんは中年から高齢の比較的高い年齢の方がかかるイメージですが、「子宮頸がん」は、20~40歳代の若い女性でもかかるがんですので注意が必要です。有名人では、ミュージカルの名作「エビータ」のモデルになった、元アルゼンチン大統領夫人のエバ・ペロン女史は、国民の人気が高かったにもかかわらず、子宮頸がんが原因で33歳の若さでこの世を去っています。

 今までのがんの治療の基本方針は「検診による早期発見。早期治療」でした。子宮頸がんについても、日本では以前から子宮頸がん検診が普及していて、早期発見・早期治療により死亡率を抑えてきました。ただがんの中には予防できるがんもあり、例えば以前は日本人のがんのトップだった「胃がん」は、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染が原因だとわかり、最近では積極的にピロリ菌の除菌治療が行われるようになりました。同様に「肝臓がん」に対しても、その原因となるC型肝炎を積極的に治療することで、肝臓がんを予防するようになりました。子宮頸がんは、実はHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することで発症するウィルスがんです。これを発見したドイツ人のハラルド・ハウゼン先生は、2008年にノーベル医学賞を受賞しています。そしてこのHPVに対しては、HPVワクチン=子宮頸がんワクチンを接種することで、感染を予防し、ひいては子宮頸がんの発症も予防できます。

 

 例えば4価ワクチンの場合は、全年齢でがんの発生率を66%低下、16歳までに接種した場合は88%の低下させる効果が確認できています。新しく登場した9価ワクチンでは、約90%以上の高い予防効果があるとされています。

 諸外国では、既にワクチン接種が普及しており、接種率は50~80%に達しています。そのおかげで日本以外では子宮癌の死亡率はかなり低くなってきています。日本も2013年4月に一度HPVワクチンの定期接種が開始されたのですが、同年6月に「ワクチンとの因果関係が否定できない持続的疼痛」の症例が報告されたことで、「積極的な接種の推奨の一時差し控え」がなされました。この症状は、ワクチン接種ストレス関連反応ISSRのひとつで、「解離性神経症状反応DNSR」と呼ばれます。その後、名古屋で行われた調査で、これらのDNSRは、接種群も非接種群も両方に同等の比率で存在したことが明らかになり、ワクチンとの因果関係は確認されませんでした。また世界各国で行われた20の比較研究を調べた結果、ワクチンの接種と自己免疫疾患の発症の増加の関連性は見られない、との結論が得られました。実際に見られた副反応は「注射部位の疼痛・腫脹・紅斑」などでした。この結果を受けて、厚生労働省も2022年度からHPVワクチンの積極的な接種の推奨が再開されました。現在、HPVワクチンは、12歳から16歳までの女子を対象に、公費助成による定期接種が行われています。ただこの「積極推奨が控えられていた」約10年の間は接種率が1%以下であったため、この間のほとんどの女性は接種の機会を逸しておりました。そのためこれらの対象者、具体的には今年度に17歳から27歳になる(1997年4月~2008年4月生まれ)女性を対象に、キャッチアップ接種の制度が期間限定で設けられています。この制度の間はワクチンの公費助成(原則自己負担なし)で接種が受けられますが、このキャッチアップの期限は今年度末までで、2025年3月31日までで終了となります。現在の主流のHPV9価ワクチンの接種のスケジュールは、一回目の接種から二か月後に二回目を接種、六か月後に三回目を接種することになっています。もし三回とも公費助成を受けたい場合は、期限末から逆算すると、今年2024年9月末までに一回目の接種を始める必要があります。キャッチアップ終了後にワクチンを接種する場合は全額自己負担となり、三回の接種で約10万円ほどの費用負担が生じます。なお12歳から16歳までの定期接種は引き続き公費負担で接種が続けられます。上記の接種の機会を逸した方の公費負担で接種は今回が最後のチャンスとなります。

 子宮頸がん検診による早期発見・早期治療の方針は今まで通りですが、子宮頸がんは無症状のことが多いため、発見が遅れると、子宮全摘や、最悪命を落とすこともあります。日本では今でも毎年1万人が子宮頸がんに新たに罹患し、1年間で2800人がこの病気で亡くなっています。WHOは、全世界でワクチン接種を進めることで、今世紀末までに子宮頸がんを根絶させることを目指しています。若い女性のQOLを改善し、命を少しでも助けるために、HPVワクチンの接種を受けることを今一度皆さんで考えてもらいたいとお願いします。

 

 以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

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